概要
弊社は、暗号資産追跡調査プラットフォームChainalysis(チェイナリシス)の正規販売代理店です。
暗号資産をたどる調査では、取引所や中間ウォレット、クロスチェーンブリッジを経由するうちに資金の経路が枝分かれし、公開されている台帳を目で追うだけでは行き先が分からなくなります。
Chainalysisの中心にあるのは、ツールではなくデータです。ブロックチェーン上の取引に、同じ鍵に支配されているとみられるアドレスのまとまり(クラスタ)と、そのクラスタが実在のどの事業者や集団に結び付くのかという情報を重ねた基盤があり、13万4,000を超えるエンティティが特定されています(2026年6月時点の公開値)。ReactorやRapid、Data Solutionsは、いずれもこの同じ基盤を使うアプリケーションです。
Chainalysis社は2026年、この「クラスタ」という言葉が3つの異なる主張を覆っているとして、用語を整理する枠組みを提案しています。どのアドレスが同じ鍵に支配されているかという構造の主張、あるアドレスを特定のエンティティに結び付けるアトリビューション、そしてそのエンティティがそのアドレスをどう運用しているかという主張の3つで、それぞれ求められる証拠の水準も、誤りの現れ方も異なります。
このうち構造の主張については、判定が決定的であること、再現できること、監査できること、どのように失敗しうるかが分かっていることを条件に置き、機械学習を使っていません。予測の精度の問題ではなく、判断の根拠が明示された規則ではなく学習データから来ている場合、「なぜこれらのアドレスがつながっていると言えるのか」という問いに答えられなくなるためです。機械学習は、端緒を作る、異常を見つけるといった、確定した事実ではなく調査の手がかりを示す領域で使われています。
この方法論は、2024年の米国連邦裁判所の判断(United States v. Sterlingov)で、専門家の証拠として採用できると認められています。第三者の研究機関による実証的な検証も受けています。
捜査機関や政府機関でお使いいただくことを想定した製品群で、押収の実務を扱うツールや認定トレーニングもあわせてご提供しています。
調査でできること
Chainalysisは、暗号資産の調査を「見つける」「読み解く」「追う」の3段階で整理しています。製品も、この3段階のどこを担うのかで役割が分かれます。
調査に進むべき対象を切り分ける
被害の相談や押収した端末から出てきたアドレスは、調べる価値があるのかどうかがその場では分かりません。専門の担当者に回すかどうかを決めるだけでも時間がかかり、その間にも資金は動きます。
Rapidは、アドレスを1つ入力するだけで、そのアドレスがどう分類されているか、取引の総額がどれくらいか、制裁対象からの入金や取引所での換金があるかを示します。暗号資産の知識がなくても読める形で示され、次に取るべき手順まで提示されます。ブラウザで動くため、現場に持ち出した端末からも使えます。所見はそのまま組織内の捜査担当者へ引き継げます。
まだエンティティが特定できていないアドレスについては、Signalsが手がかりになります。オンチェーンでの振る舞いから、詐欺やミキサーの疑いといった分類と、利用しているウォレットアプリの推定を与えるデータセットで、100万件を超えるアドレスに不正の疑いのラベルが付いています。確定した事実ではなく、確信度を添えた示唆として扱う設計です。詐欺やダークネットマーケット、児童搾取に関係しうるウォレットを早い段階で拾う用途に向いています。
資金の流れを読み解く
切り分けの次は、資金がどこへ渡ったのかを一本の筋道として組み立てる段階です。ここを担うのがReactorです。
どのクラスタからどのクラスタへ資金が動いたのかを、つながりのグラフとして描きます。枝分かれや合流を図として見られるため、どの経路を優先して追うかを判断しやすくなります。
1つのクラスタについては、次のような情報を確認できます。
- クラスタが持つアドレス
- クラスタの残高、入出金の量
- クラスタのカテゴリ
- クラスタの取引先アドレス
入出金がどのエンティティに紐づいているかも確認できるため、照会先の事業者を特定する場面で使えます。
クロスチェーンブリッジは、異なるブロックチェーンの間で暗号資産を移動するために使われます。1回の移動に複数のスマートコントラクトと中間ステップが関わるため取引が複雑になり、追跡が難しくなる部分です。Reactorのトランザクションエクスプローラーは、数百のブリッジプロトコルと分散型取引所にまたがる1億8,000万件を超えるブリッジ取引を解釈し、この過程を図として示します。送金先のウォレットをグラフに追加すると、ブリッジ取引の内容と取引IDが注記として自動で作られます。
グラフに置けるのはオンチェーンの情報だけではありません。銀行口座、ATM、IPアドレス、メールアドレス、端末、書類、捜査機関といった現実世界の対象を独自のオブジェクトとして追加でき、聞き取りや令状で得た情報を資金の流れと同じ図の上で扱えます。
暗号資産犯罪の動向や、制裁・摘発の事例は、Chainalysis社の日本語ブログでも紹介されています。
照会先に問い合わせ、資金を止める
経路が読めても、そこで止まってしまえば資産は戻りません。最後の段階は、特定した事業者に問い合わせ、資産を押さえるところです。
Service Provider Inquiryは、資金が流れ着いた取引所などの事業者に対して、被疑者のKYC情報の照会と資金の凍結の依頼を出すための機能です。得られた情報を捜査のデータベースと突き合わせ、押収令状の根拠につなげる使い方が想定されています。
押収の現場ではWallet Scanを使います。シードフレーズ1つから導出されるアドレスは数百万件に及ぶことがあり、1つ見落とすだけで資産が相手の手元に残ります。Wallet Scanはシードフレーズから公開鍵への変換を自動で行い、複数のブロックチェーンにまたがって、紐づくウォレットと残高を洗い出します。処理はオフラインで行われ、シードフレーズがChainalysis社へ送られることはありません。結果は数分で出るため、そのままグラフに取り込んで分析を続けられます。
製品ラインアップ
Chainalysisには複数の製品がありますが、ここでは捜査機関・政府機関でお使いいただくものを挙げます。
| 製品 | 役割 | 担う段階 |
|---|---|---|
| Reactor | アドレスとクラスタのつながりをグラフで追跡し、資金の流れを可視化する | 読み解く |
| Rapid旧称 Field Investigations | アドレスの評価を短時間で行い、詳細な調査に進むべき対象を切り分ける | 見つける |
| Wallet Scan | シードフレーズから導出されるアドレスを走査し、資産が存在するウォレットを特定する | 追う |
| Data Solutions | Chainalysisのデータセットに直接アクセスし、条件に合う活動を検索・監視して、分析やアラートを自動化する | 見つける/読み解く |
| Alterya | 詐欺に使われる口座やアドレスをAIで検知し、被害が生じる前に把握する | - |
Data Solutionsは、当初はSQLやPythonを扱う技術者向けの製品でしたが、2026年1月に追加されたWorkflowsにより、穴埋め形式の画面から高度な分析を実行できるようになりました。入金と出金の対応づけの候補を絞り込む、複数の脅威アクターが共有する取引相手を洗い出す、条件に合致するウォレットを探す、といった分析が用意されています。問い合わせの組み立ては、Chainalysis社の専門家チームの支援を受けることもできます。
Data Solutionsをご契約の組織向けには、AIエージェント「Chain」が提供されています。自然言語で書いた指示から調査用のグラフやダッシュボード、レポートを生成し、繰り返し行う手順を毎回同じ結果になるワークフローとして固定できます。同じ入力に対して同じ出力を返し、参照したデータと実行した操作が記録されるため、結果の根拠を後から示せる作りになっています。使用するモデルは複数の提供元から選べます。
Alteryaは、Chainalysis社の製品分類では捜査向けの製品とは別の枠に置かれています。資金が送られてしまう前に受取側を見極める用途の製品です。
提供ライセンスとオプション
ライセンスは、製品と付帯するオプションの組み合わせでご提供しています。ご利用の規模や必要な機能によって構成が変わるため、価格を含む詳細はお問い合わせください。
- Reactorのライセンス
- 各種オプション(高度な機能の追加)
- 調査・レポート作成などのサービス
- 認定トレーニング
ご契約にあたっては、Chainalysis社が公開している次の規定が適用されます。
専門家による調査支援
ツールの提供だけでなく、Chainalysis社の専門家が調査に直接関わる支援もあります。Global Servicesとして、次の4つを柱に提供されています。
- 研修と認定資格による組織の能力開発
- 複雑な事案の調査に、専門家の知見と機能を提供する
- データを使って脅威を特定し、優先順位を付ける
- 暗号資産を扱う中核部門の立ち上げ
世界で120名以上の専門家が在籍しています。ご相談の内容によって進め方が変わりますので、まずはお問い合わせください。
認定トレーニング
Chainalysisには、製品の操作にとどまらず、暗号資産の調査そのものを扱う認定プログラムがあります。2026年に体系が刷新され、基礎のChainalysis Digital Asset Fundamentals(CDAF)をすべてのコースの前提として、調査の標準・上級・最上級という段階に整理されました。押収を扱うChainalysis Asset Seizure Certification(CASC)は、公共部門の職員の方に限って提供されます。
Reactorのライセンスには、オンデマンドで受講できるChainalysis Academyの利用が含まれます。これとは別に、講師がオンサイトで指導する認定コースがあります。コースごとの内容と受講形式は、下記のページにまとめています。
暗号資産のマネーロンダリングで押さえる論点
資金の流れをたどるとき、経路を分かりにくくするために使われる手口を知っておくと、どこで追跡が難しくなるのかを見通せます。前提として、Chainalysisは同じ主体が支配しているとみられるアドレスを1つにまとめるアドレスのクラスタ化を行い、その単位で資金の動きを追います。不正な資金は、直接あるいは難読化を経て、その半分以上が最終的に中央集権型の取引所へ行き着きます。マネーロンダリングの手口については、Chainalysis社の記事「日本における暗号資産のマネーロンダリング: 日本の視点から見たグローバルの共通問題」では、次の論点が挙げられています。
- 中間ウォレット追跡を難しくするために複数のプライベートウォレットを経由させる手口です。資金洗浄のチャネルを流れる資金の多くがここを通ります。
- 資金経路を複雑にするサービスロンダリングに広く使われる一方、プライバシー保護という非合法ではない用途もある点に留意が必要です。
- ミキサー複数の利用者の暗号資産を混ぜ合わせ、資金の出所や所有者を分かりにくくするサービスです。
- クロスチェーンブリッジ異なるブロックチェーンの間の資産移転を仲介します。ここを通過すると取引の流れが一層複雑になります。
- プライバシーコイン高度な暗号化によって取引の詳細を隠す機能を備えたトークンです。MoneroやZcashが該当します。
- ステーブルコイン犯罪収益の移転手段としても使われます。ただし発行者が当局に協力的で資金を凍結できる場合があり、資金洗浄を行う側にとってのリスクも大きくなります。
- 相対取引(OTC)ブローカー最小限の審査で大口の取引を扱い、公開のオーダーブックやKYCの要件を回避していることがあります。
日本の事案には固有の傾向があります。日本のサービスは利用者の多くが国内にいるため、制裁対象やダークネットマーケット、ランサムウェアといった国際的な不正エンティティとの接点は総じて小さく、代わりに、暗号資産の外で起きた犯罪の収益の洗浄と、詐欺による被害が主な論点になります。中央集権型取引所に開設された不正な口座の多くは、フィッシングなどでオンラインバンキングから盗まれた資金を、法定通貨で受け取るためのものです。
そこで繰り返し現れるのが集約ウォレットです。取引所から資金を受け取る最初のアドレスは分散していて短命ですが、その先ではより少数のウォレットや入金アドレスに資金が集められます。ETHが絡む事案では、集約ウォレットが分散型取引所やブリッジを経由してETHをUSDTに交換する動きも見られます。
ここで挙げた用語の定義は、Chainalysis社の用語集にもまとめられています。個別の手口については、同社が日本語で公開している次の記事も参考になります。
Chainalysis社ブログ2026年Crypto Crime Reportイントロダクション2025年に不正なアドレスへ送られた資金の総額と、その内訳を示した記事です。北朝鮮による大型の窃取や、制裁回避を目的としたトークンの流通など、国家が関与する活動が規模を押し上げた経緯を扱っています。
Chainalysis社ブログ2026 Crypto Crime Report: 詐欺詐欺の手口が分業化・産業化している状況を、資金の流れから整理した記事です。フィッシングキットやディープフェイクの組み合わせ、被害を抑えるために取りうる打ち手までを扱っています。
関連記事Chainalysisの「2026年 暗号資産犯罪動向調査レポート」が公開されました2025年の不正取引総額、AIを使った詐欺の広がり、中国語圏のマネーロンダリングネットワークの規模など、レポートの要点を日本語でまとめています。レポート本体の入手先も案内しています。







