製品概要
アクセスログにIPアドレスが記録されていても、その通信がどこの国から来たのか、データセンターからの通信なのか、VPNを経由したものなのかは、IPアドレスそのものからは判断できません。MaxMind GeoIP は、この判断に必要なデータをまとめて提供するデータベースです。
セキュリティ対策では、主に次のような使われ方をします。
| 用途 | 内容 |
|---|---|
| 地理的なアクセス制限 | サービスを提供していない国や地域からのアクセスを遮断する |
| 不正アクセスの検出 | 普段と異なる国や地域からのログインを検知し、アカウントの乗っ取りを早期に発見する |
| リスクベース認証 | 通常の利用範囲外からのアクセス試行に対して、追加の認証を要求する |
| トラフィック分析 | 特定の地域やネットワークからのアクセス集中を、攻撃の兆候として識別する |
| 不正取引の検出 | 決済時のIPアドレスとカード発行国の不一致など、地理的な矛盾から不正を検出する |
| 規制・コンプライアンス対応 | 地域ごとに異なる規制に合わせて、アクセスとデータの流れを制御する |
データベースは自社のサーバーに配置して使うため、クエリ数の制限を気にする必要がなく、外部への問い合わせによる遅延も発生しません。用途によってライセンスの区分が変わるため、価格とあわせて「社内限定利用と商用利用の違い」もご確認ください。
提供されるデータベース
MaxMind GeoIP は単一の製品ではなく、必要なデータの種類ごとに分かれています。位置情報だけで足りるのか、ISPやドメインまで必要なのか、VPNやプロキシの判定まで必要なのかによって、契約するデータベースが変わります。複数を組み合わせて契約することもできます。
| 分類 | データベース | 分かること |
|---|---|---|
| 位置情報 | GeoIP Country Database GeoIP City Database GeoIP City Database by Continent |
大陸、国、州・都道府県、市区、郵便番号、緯度・経度、タイムゾーン |
| ネットワーク | GeoIP ISP Database GeoIP Domain Name Database GeoIP Connection Type Database |
ISP名、組織名、AS番号、ドメイン、接続の種別 |
| 匿名IP・プロキシ検知 | GeoIP Anonymous IP Database GeoIP Anonymous Plus Database |
VPN、パブリックプロキシ、Tor、ホスティング事業者、レジデンシャルプロキシの判定 |
| 統合 | GeoIP Enterprise Database | 上記の位置情報とネットワークに加えて、利用者種別と判定の信頼度 |
すべてのデータ項目がどのデータベースに含まれるか、各項目が何を意味するかは、下記の日本語版比較表にまとめています。
MaxMind GeoIP Database 比較表+データディクショナリ(日本語版・PDF)
位置情報データベース
アクセス元の国や地域を判定するためのデータベースです。国単位で足りるか、州・都道府県や市区まで必要かで選びます。
| データ項目 | GeoIP Country Database | GeoIP City Database |
|---|---|---|
| IPv4/IPv6への対応 | ||
| 大陸・国 | ||
| EU加盟国の判定 | ||
| 登録国・代表国※1 | ||
| 州・都道府県などの地域区分 | ||
| 市区名 | ||
| 郵便番号 | ||
| 緯度・経度と精度半径 | ||
| タイムゾーン | ||
| ローカライズ対応言語 | 日本語、簡体字中国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ブラジルポルトガル語、ロシア語 | |
- ※1 登録国はISPがそのネットワークを登録した国、代表国は海外の軍事施設など、そのIPアドレスの利用者が代表する国を指す
国内の特定の地域を対象にアクセスを制御する場合は GeoIP City Database が必要です。Country Database は国単位の判定しかできないため、ある国の一部の地域だけを対象にすることはできません。
この違いは経済制裁への対応で問題になります。MaxMind社は、地域が係争中である場合も含めて、ほぼすべてのケースでISOに従って地域の帰属国を判定しており、ISOで複数の帰属が認められる場合の判断も政治的な立場に基づくものではないとしています。そのため、係争地域を実効支配する国の側にまとめて分類することはできず、地域区分の値を指定して個別に扱う必要があります。
対象地域を絞れる場合は、地域別に分割された GeoIP City Database by Continent という選択肢もあります。アフリカ、アジア太平洋、ヨーロッパ、北米、南米の5種類があり、全世界版より安価です。
ネットワークデータベース
そのIPアドレスが誰のネットワークに属しているかを判定するためのデータベースです。位置情報だけでは分からない、通信元の素性を確かめる用途に使います。
| データベース | 含まれるデータ | 主な用途 |
|---|---|---|
| GeoIP ISP Database | ISP名、組織名、AS番号、AS組織名、モバイル国コード(MCC)、モバイルネットワークコード(MNC) | 通信元が企業回線か、モバイル網か、ホスティング事業者かを見分ける |
| GeoIP Domain Name Database | ネットワークに対応するセカンドレベルドメイン | 組織のドメインからアクセス元の所属を推定する |
| GeoIP Connection Type Database | 接続の種別(corporate/cable/DSL/cellular/satellite の4種類) | モバイル回線特有のIPアドレスの流動性を考慮した判定を行う |
モバイル回線はIPアドレスが頻繁に切り替わるため、位置情報だけで判定すると誤検知が増えます。接続の種別を併用すると、この誤検知を抑えられます。
匿名IP・プロキシ検知データベース
VPNやプロキシの利用を判定するためのデータベースです。GeoIP Anonymous IP Database は、次の5つの観点でIPアドレスを判定します。
- 匿名VPNサービスに属しているか
- ホスティング事業者やデータセンターに属しているか
- パブリックプロキシに属しているか
- Torの出口ノードか
- レジデンシャルプロキシに属しているか
GeoIP Anonymous Plus Database は、この判定に加えて次の3つのデータを返します。
| 追加されるデータ | 内容 |
|---|---|
| VPNプロバイダー名 | そのネットワークに対応するVPN事業者の名称。MaxMind社が識別している事業者は一部に限られる |
| 判定の信頼度 | そのネットワークが現在稼働中のVPNサービスの一部である確からしさを、1〜99のスコアで示す |
| 最終検知日 | 匿名化ネットワークの分析において、そのネットワークが最後に観測された日 |
判定の信頼度と最終検知日を併用すると、すでに使われなくなったVPNのIPアドレスを遮断し続けることを避けられます。
企業VPNは匿名IPとして検知されません。他のVPNやレジデンシャルプロキシのような悪意ある活動に使われることが通常ないため、匿名IPとしては識別されず、利用者種別がbusinessとして記録されます。
同様に、Google Fi VPN、Google One VPN、Apple iCloud Private Relay、Cloudflare WARP の4つも匿名IPとしては識別されません。ISPデータ側に事業者名が設定され、利用者種別がconsumer privacy networkとなります。Microsoft Edge Secure Network はCloudflareを利用しているため、Cloudflare WARP として識別されます。これらを検知の対象にする場合は、匿名IPの判定ではなく GeoIP ISP Database 側で判断します。
レジデンシャルプロキシは、一般の家庭や企業の回線を経由して通信するため、データセンターからの通信を前提とした検知では捕捉できません。仕組みと検知の考え方は下記の記事にまとめています。
GeoIP Enterprise Database
位置情報とネットワークのデータベースをまとめ、さらに固有のデータを加えた統合版です。含まれるのは次のとおりです。
- 個別にも契約できるデータベース
- GeoIP Country Database
- GeoIP City Database
- GeoIP ISP Database
- GeoIP Domain Name Database
- GeoIP Connection Type Database
- Enterprise でのみ提供されるデータ
- 利用者種別(ビジネス、カフェ、セルラー、大学、消費者向けプライバシーネットワーク、CDN、政府機関、ホスティング、図書館、軍事機関、住宅、ルーター、学校、検索エンジンのクローラー、旅行者)
- 国・地域区分・市区・郵便番号のそれぞれについて、判定が正しい確からしさ(1〜100)
判定の確からしさは、しきい値を決めて使います。MaxMind社は、位置を特定できない場合により粒度の粗いデータを返す仕様のため、確からしさが低いときは国レベルの判定に切り替えるなど、段階的に扱いを変える設計を推奨しています。
匿名IPに関するデータはEnterpriseには含まれません。VPNやプロキシの判定が必要な場合は、GeoIP Anonymous IP Database または GeoIP Anonymous Plus Database を別途ご契約ください。
ライセンスと価格
MaxMind社のデータベースは、契約する製品だけでなく、何に使うかによってもライセンスが変わります。価格を比較する前に、自社の用途がどちらに当たるかをご確認ください。
社内限定利用と商用利用の違い
メーカーのサイトに掲載されている価格は、オンラインEULAが定める社内限定利用(Internal Restricted Business Purposes)に当てはまる場合のものです。オンラインEULAは、この用途をコンテンツのカスタマイズ、不正防止、地理的なレポーティングのための利用と定義しており、自社以外の利用者がそのジオロケーション機能を自分たちの目的で使えるようなアプリケーションやプラットフォームに、機能として提供することは含まれない、としています。
具体的には次のように分かれます。
| 社内限定利用に当たる(追加ライセンス不要) | 商用ライセンスが必要になる |
|---|---|
| 自社サイトへのアクセス元の国や地域を判定し、特定の地域からのアクセスを遮断する | 自社の顧客が、自分たちのサービスで特定の地域からのトラフィックを遮断できるよう、機能として提供する |
| 自社サイトへのアクセス元のネットワーク情報や利用者種別を収集し、トラフィックを分析して業務上・セキュリティ上の判断に使う | GeoIPデータベースのネットワークデータを使って、自社の顧客やユーザー向けの不正検知システムを構築する |
| 自社サービスへのログインや取引について、地理的な矛盾から不正を検出する | 取得したIPアドレスの位置を、自社サイトの訪問者や顧客に表示する |
| 自社サイトの訪問者に対して、地域や回線に応じてコンテンツを出し分ける | 広告主に代わって、その広告を配信する目的でアクセス元の位置を判定する |
4行目は、同じ「コンテンツの出し分け」でも、誰のサイトで行うかによって扱いが変わる例です。自社サイトの表示を自社の判断で変えるだけであれば社内限定利用の範囲ですが、広告主や取引先のために判定する場合は商用ライセンスの領域に入ります。
判断に迷う場合は、次の4点を整理しておくと早く進みます。メーカーが用途を確認する際に必ず尋ねる項目です。
- そのデータを何に使うのか
- データベースを自社環境にホストする必要があるか
- 取得したGeoIPデータを、自社の顧客やサイト訪問者に表示するか
- 自社が提供する製品・サービスの機能の一部としてデータを使うか
後半の2つが「はい」であれば、商用ライセンスの検討が必要になります。商用ライセンスの価格は用途ごとの個別見積となるため、上記を整理したうえでご相談ください。
組織の範囲についても注意が必要です。オンラインEULAで購入したデータベースは、エンドユーザーの組織外と共有できません。100%出資の子会社であっても別法人であれば、各社がそれぞれライセンスを持つ必要があります。また、システムの構築や運用を外部の事業者が担う場合は、実際にデータを扱うその事業者がエンドユーザーとみなされ、インテグレーター向けのライセンスが必要になります。SIerに運用を委託する場合のほか、制作会社が顧客のサイトにGeoIPデータを組み込む場合もこれに当たります。
価格
以下は2026年9月時点のメーカーの定価です。年間契約の場合の価格で、実際にはこれに150〜180円を乗じた価格になります。
| データベースの種類 | 含まれる情報 | 年契約 |
|---|---|---|
| GeoIP Country Database | 大陸名、国名など | $418 |
| GeoIP City Database | 大陸名、国名、都市名、郵便番号、緯度・経度、精度半径、タイムゾーンなど | $1,628 |
| GeoIP City Database by Continent | 同上(アフリカ/アジア太平洋/ヨーロッパ/北米/南米の5種類) | $660 |
| GeoIP ISP Database | ISP名、組織名、AS番号、AS組織名、モバイル国コード、モバイルネットワークコード | $539 |
| GeoIP Domain Name Database | セカンドレベルドメイン | $418 |
| GeoIP Connection Type Database | 接続の種別(corporate/cable/DSL/cellular/satellite) | $1,507 |
年間契約のほかに、月額契約と、1か月だけ利用する単発購入も選択できます。
上記に含まれない統合版と匿名IP関連のデータベースについては、次のとおりです。
- GeoIP Enterprise Database:$50,000〜
- 位置情報とネットワークのデータベースをすべて含み、利用者種別と判定の信頼度が加わります
- GeoIP Anonymous IP Database:$48,000〜
- GeoIP Anonymous Plus Database:要お問い合わせ
これら3つはメーカーのサイトから直接購入できない製品で、用途を確認したうえでの個別見積となります。
GeoIPとGeoLiteの違い
無償のGeoLiteから始めて後から問題になりやすいのが、ライセンスの範囲です。GeoLiteのライセンスは、MaxMind社への帰属表示を付けることを条件に、製品やサービスの中でGeoLiteデータを使うことを認めています。帰属表示なしで製品やサービスに組み込みたい場合や、顧客に再配布したい場合に、別途の有償ライセンスが必要になります。
注意したいのは、有償のGeoIPのほうが制約が強い場面があることです。MaxMind社自身が、GeoIPのオンラインEULAはGeoLiteのライセンスより厳しい場合も緩い場合もあるとしたうえで、GeoIPデータベースは商用ライセンスなしでは社内限定利用にしか使えないと説明しています。無償版のほうが製品への組み込みの自由度が高い場面があります。
| 項目 | GeoIP(有償) | GeoLite(無償) |
|---|---|---|
| 提供されるデータベース | 位置情報、ネットワーク、匿名IP・プロキシ検知、統合版 | GeoLite Country、GeoLite City、GeoLite ASN |
| IPインテリジェンスデータ | ISP、ドメイン、接続の種別、匿名IP、利用者種別などを提供 | AS番号を除いて含まれない |
| 更新頻度 | データベースにより毎日、または平日毎日、または週2回 | ASNは平日毎日、CountryとCityは週2回(火・金) |
| ライセンス | 商用ライセンスがない場合は社内限定利用に限られる | 帰属表示を付ければ製品・サービスでも利用可能。帰属表示なしでの組み込みや再配布には有償ライセンスが必要 |
| サポート | 対象 | 対象外。統合その他の問い合わせには対応しない |
FAQ
- IPinfoやSpurと比較してどうですか?
- 各データベースの更新頻度はどの程度ですか?
- 複数のシステムと統合できますか?
- MMDB形式とCSV形式は、どちらを選べばよいですか?
- データベースに載っていないIPアドレスはありますか?
- 注文から利用開始までの流れはどうなりますか?





